【経営コラム】幸運も不運も平等に降り注いでいる!
…「外向性」と「経験への開放性」が運を引き当てる!
脳科学者である中野信子氏は、「運」というものを、単なる偶然や神秘的な力ではなく、“脳の特性”や“人間の行動パターン”によって大きく左右されるものとして捉えています。この考え方は、中小企業経営者にとって非常に示唆に富んでいます。
なぜなら、経営とは常に不確実性の中で意思決定を行い、限られた資源の中で未来を切り開いていく行為だからです。
多くの人は、「あの人は運が良い」「自分は運が悪い」と簡単に言います。しかし中野氏は、幸運も不運も、基本的には誰にでも平等に降り注いでいると考えています。違いを生むのは、“その運をどう受け止め、どう使ったか”です。
例えば、景気悪化、円安、人手不足、AIの進化、物価上昇、これらは全ての企業に平等に訪れています。しかし結果は大きく異なります。ある企業は、値上げを実施する、AI導入で生産性を高める、新規市場へ挑戦する、DX化を進めることで成長します。一方で、「景気が戻るまで待とう」「昔のやり方を守ろう」「失敗が怖い」という姿勢の企業は、徐々に競争力を失っていきます。つまり、同じ“環境変化”という運が訪れても、変化を機会として捉える人、行動を起こす人、挑戦する人の方が、結果として「運が良い人」になるのです。
経営においても同じです。
成功している経営者を見ると、「特別な才能があった」と思いがちですが、実際には、行動量が多い、判断が速い、新しい情報を取りに行く、人に会う、小さく試すといった特徴を持つ人が多く見られます。運とは、“偶然をつかむ回数”とも言えるでしょう。動いている人ほど、偶然と接触する機会が増えるのです。
さらに中野氏は、「運は映る」という非常に興味深い考え方を示しています。これはスピリチュアルな話ではありません。人間の脳には、他人の感情や行動、思考パターンを無意識に模倣する性質があります。心理学では「同調行動」や「ミラーニューロン」とも呼ばれる現象です。
例えば、前向きな人と一緒にいると、自分も前向きになりやすい、挑戦する人と付き合うと、自分も挑戦しやすくなる、学び続ける人と接すると、自分も刺激を受けるという経験は、多くの人にあるでしょう。逆に、愚痴ばかり言う人、他責思考の人、「どうせ無理」と考える人に囲まれていると、自分自身も無意識に保守的になり、行動量が減っていきます。つまり、「運が良い人の近くにいると運が良くなる」という現象は、実際には“思考パターンが感染している”のです。
中小企業経営者にとって、これは極めて重要です。
経営者は孤独になりやすく、日々の業務に追われると、自社の中だけで物事を判断するようになります。しかし、それでは視野が狭くなり、変化への感度が落ちてしまいます。だからこそ、成長している経営者と会う、異業種の人と交流する、若い世代の価値観に触れる、新しいテクノロジーを学ぶことが重要なのです。誰と付き合うかによって、経営者の思考は変わります。そして、思考が変われば、行動が変わります。行動が変われば、結果が変わります。
また、中野氏は「外向性」と「経験への開放性(新規探索性)」が高い人ほど、運が良くなりやすいとも指摘しています。これは非常に合理的です。外向性が高い人は、人に会う、情報交換をする、新しい場所へ行く、行動回数が多いという特徴があります。その結果、新しい人脈、ビジネスチャンス、偶然の紹介、新市場の情報に出会う確率が高くなります。また、「経験への開放性」が高い人は、新技術を試す、新しい価値観を受け入れる、失敗から学ぶ、未知を恐れないという特徴があります。つまり、“未来に接触する回数”が増えるのです。
現在の時代は、AI、DX、人口減少、インフレ、人手不足など、社会構造そのものが大きく変化しています。この時代に必要なのは、「過去の成功体験を守る力」ではありません。必要なのは、変化を受け入れる力、探索する力、行動する力、学び続ける力です。
運とは、待っていれば空から降ってくるものではありません。運とは、「行動した人」が結果としてつかみ取るものです。そして、行動を変える最初の一歩は、誰と付き合うか、何を学ぶか、どこへ行くかを変えることなのかもしれません。
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