【実践コラム】在庫が資金を圧迫するときの見直しポイントについて

…滞留を減らすだけで資金繰りは改善します。

前回は、売掛金の増加が資金繰りを圧迫するときの見直しポイントを整理しました。今回は、在庫が増えて現金が残らなくなる場面で、社長が最初に見直したい実務ポイントをお話しします。

在庫は現金が形を変えたものです。仕入れた瞬間に現金は外に出ていきます。一方で損益計算書では、在庫はすぐに費用にならない場合があります。このズレが、黒字でもキャッシュが薄くなる原因になります。

在庫が資金を圧迫しているかどうかは、棚卸資産の増減を見れば分かります。売上が伸びていないのに在庫が増えている、在庫が増えるペースが売上の伸びより速い。この形になっている場合、資金は社内で止まっています。キャッシュポジションを最低でも月商一か月分以上に保つためにも、早めに対処したい領域です。

最初に確認したいのは、在庫の中身です。在庫が多いといっても、売れる在庫と売れない在庫が混ざっています。経営判断で重要なのは、滞留している在庫の金額です。現場の感覚ではなく、数字で把握します。

次に確認したいのは、滞留の原因です。滞留が発生する背景は会社によって違います。売れ筋の読み違い、販売計画より仕入れが先行している、最小ロットの都合で買い過ぎている、値付けが強気で動かない。この原因が整理できると、対策が具体的になります。

三つ目は、仕入れの条件です。在庫が増える会社は、仕入れの条件が資金繰りに合っていないことがあります。仕入れロットを小さくできないか、納品の分割ができないか、支払条件を延ばせないか。仕入れ条件の改善は、在庫と現金の両方に効いてきます。

四つ目は、在庫の持ち方のルールです。現場に任せきりになると、在庫は自然に増えやすくなります。最低在庫と最大在庫の上限を決める、売れ筋と死に筋を分ける、発注の判断基準を明文化する。こうしたルールがあるだけで、在庫の膨張は抑えやすくなります。

五つ目は、滞留在庫の処分方針です。滞留在庫は置いておくだけでお金を生みません。倉庫代、管理の手間、品質劣化のリスクも発生します。一定期間を超えた在庫は値引きで現金化する、セット販売に組み込む、販路を変えてでも動かす。こうした方針を決めると、資金が戻るスピードが上がります。

ここで注意したいのは、利益を守ろうとして在庫を動かさない判断です。値引きは痛みを伴います。ただし在庫として持ち続けることも、資金繰りという形でコストになります。月商一か月分以上のキャッシュを守るという基準を置くなら、現金化を優先する局面もあります。

在庫の改善は、社長の意思決定が反映されやすい分野です。滞留の把握、仕入れ条件の見直し、在庫ルールの設定、処分方針の明確化。この順番で整理すると、資金繰りは確実に改善します。

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