【実践コラム】運転資金の借り方について

…資金の性質に合った借り方を選ぶと、資金繰りは安定します。

前回は、銀行が融資をどこで判断するのか、返済原資と資金使途を中心に整理しました。今回は一歩進めて、運転資金には複数の借り方があること、そして資金の性質に合った形を選ぶことの大切さをお話しします。A社の1,600万円を例に見ていきます。

まず押さえたいのは、運転資金と一口に言っても、必要とされ方が一様ではないという点です。一時的に膨らんで、しばらくすれば戻ってくる資金もあれば、事業を続ける限り寝続ける資金もあります。この性質の違いによって、借り方は変わってきます。

A社の1,600万円は、後者にあたります。仕入れの現金先出しと、入金までの期間を埋めるために、事業が回っている間じゅう必要とされ続ける資金でした。売上が続く限り、この資金は現金に戻っては次の仕入れと売掛に姿を変え、手元を離れ続けます。こうした資金を、短期間で返す借り方で調達すると、無理が生じます。返済のたびに手元資金が削られ、事業に必要な1,600万円を維持できなくなるからです。

このような経常的な運転資金には、大きく2つの向き合い方があります。1つは、証書貸付で長めの期間を設定し、毎月少しずつ返す形です。この場合に重要なのは、前々回までに触れたとおり、返済後も手元資金が基準を下回らないように、返済額と期間を事業の体力に合わせて設計することです。もう1つは、当座貸越や短期の借入を反復して継続する形です。経常的に必要な運転資金の性質に、借りては返しを繰り返せる枠の考え方は本来なじみやすいものです。どちらが使えるかは、会社の状況や取引金融機関の方針によって変わります。

一方で、季節的な要因で一時的に資金需要が膨らむケースは、性質が異なります。繁忙期に向けて仕入れが先行し、売上が立って入金されれば戻ってくるような資金です。このタイプは、必要な時期に借りて、資金が戻るタイミングで返す短期の借入がなじみます。恒常的に必要な資金と、一時的に必要な資金を切り分けて考えると、借り方の選択がはっきりします。

ここで大切なのは、資金の性質と借り方がずれると、資金繰りに無理が出るという点です。事業を続ける限り必要な1,600万円を、短期で返す前提の借入だけで賄おうとすれば、返済のたびに資金が薄くなり、また借りるという不安定な状態が続きます。逆に、一時的にしか必要としない資金を、長期でずっと借り続ければ、不要な利息を払い続けることになります。資金がどういう性質のものかを見極めることが、借り方を選ぶ出発点です。

そして、この見極めの土台になるのも、やはり資金繰り表です。必要な資金が経常的なものか一時的なものかは、残高の推移を追えば見えてきます。年間を通して常に一定額が寝ているなら経常的な運転資金であり、特定の時期だけ膨らんで戻るなら季節資金です。表の形で見えていれば、銀行に対しても、なぜこの借り方が適切なのかを根拠とともに説明できます。

次回は、こうした借入の相談を進めるときに、銀行に対して自社の状況をどう見せるか、決算書や試算表、資金繰り表の示し方を整理していきます。

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