【実践コラム】日繰り業務から解放されるために


…資金繰りをぎりぎりで回すのが日常の業務になっていませんか

ある関与先様との雑談です。
毎月のお金のやりくりに結構な神経を使っているとのことです。多忙な毎日において、「10日の入金を15日の支払いに充てて・・・足りない分の支払いは月末に回して・・・」といった事を考えるのが面倒くさいとおっしゃいます。

○以下が同社のバランスシートの一部です。年商は約1億円です。
現預金   700万円 / 借入金 2,000万円
売掛金 1,200万円 / 買掛金   600万円

毎月末日の現預金残高は700万円程度残っていますので、根本的に資金繰りが回っていない訳ではありません。ただ、月初から月中にかけて支払いが先行しますので、月中の資金が一時的にタイトになるようです。

財務内容は健全で調達余力のある会社です。なぜ借入を活用しないのか不思議に思ったため、率直にお聞きしたところ、社長は驚いた顔をして、「資金繰りが回っているのに借りる必要がなぜあるのか?」とおっしゃいました。

社長のお考えは、「借入をしたら返さなくてはならないし金利も発生する。やりくりをすれば資金は回るのだし、わざわざ借入をする必要はない。」とのことです。確かに正しいお考えですが、違った考え方もできます。「金利は発生するが、自己資金で返す必要のない借入なので借りておいた方が良い。」という考え方です。

日繰りから解放されるために2,000万円を借りた場合のバランスシートを想像してみます。

○2,000万円を借りた場合のバランスシート
現預金 2,700万円 / 借入金 4,000万円
売掛金 1,200万円 / 買掛金   600万円

借入金残高が2,000万円増えていますが、同じく現預金も2,000万円増えていますので、実質的な借入金の増加額は0円です。翌月の月中は一時的に現預金が減少し、「現預金<借入金」という状態になりますが、月末には「現預金=借入金(実質無借金)」の状態に戻ります。

「自己資金で返す必要がない。」というのは、約定返済毎に現預金と借入金が同時に減っていくためです。単に借りたお金から返しているだけですので、約定返済が進んでも「現預金=借入金(実質無借金)」の状態はずっと継続します。いつでも一括返済できる現預金を有していますので、返済をそこまで意識する必要はありません。

もちろん金利は必要です。仮に2,000万円を2%で調達したとして、年間40万円、毎月3万円強の金利です。但し、社長が日繰りから解放され、より生産性の高い経営に専念できることを考えると、決して高くはないはずです。

関与先様も、「借入は出来るだけしない方が良いという固定観念があり、日繰りを行うのが当たりまえの日常になっていた。」とおっしゃっていました。今では、キャッシュポジションを高く取る経営を実践し、日繰りから解放されて経営に専念しておられます。