【実践コラム】試算表を作成する意義


…作成するメリットだけでなく作成しないデメリットも考慮しましょう

融資の申し込みをしたら銀行から試算表の提出を求められた。普段から作成していないので時間がかかりそうだ。急いでいるのに困った・・・という経験のある経営者様も多いと思います。
私の経験値ですが、資金調達のご相談に来られる年商3億円未満の中小企業様で、毎月試算表を作成している企業様は3割程度しかいらっしゃらないように思います。

試算表を作成しない理由は恐らく「必要ない」からでしょう。余程大きな規模でない限り、試算表を作成しなくても経営はできます。儲かっているかどうかは、感覚とオリジナルの集計表で十分です。また、もっと直接的な理由として、「領収証等の証憑書類を揃えるのが面倒くさい。」「会計ソフトの入力が面倒くさい。」「税理士事務所に作成を依頼しているが税理士事務所も忙しい。」といったことが挙げられます。

しかし、ご本人にとってはあまり必要のない試算表であっても、銀行などの第三者にとっては大変重要です。試算表は、経営者の頭の中をのぞくことができない第三者が、貴社の経営状態を容易に知ることができる唯一の手段です。自社の経営状態を第三者に伝えるための大変有益なツールとなります。

また、試算表からは、今年度の利益状況だけでなく、創業時から積み重ねてきた資産、負債、資本の状況が分かります。そして、これらの状況を分析することで、利益状況よりもはるかに重要な経営の課題を知ることができます。

試算表は、作成するメリットよりも、作成しないデメリットの方が大きいと思います。ビジネスチャンスに遭遇した時、不測の事態が起こった時、急きょ資金が必要になります。頻繁に起きる事ではありませんが、いざ起きたときには大変重要な問題です。早く資金が欲しいという状況にあって、約7割の企業様は、試算表を作成するところから始めなくてはなりません。過去の分をまとめて作りますので、最低でも1か月、長い場合は数カ月かかることもあります。機会の損失です。

まずは、今現在自身が必要としなくても、いざという時に必要であるという認識を持って、平素から試算表を作成する体制を構築してはいかがでしょうか。次に、自身が財務の知識を深めるか、財務の知識を持った人間を横に置いて、試算表を経営に活かしてはいかがでしょうか。