【実践コラム】売上の入金口座をどこに置くか


…売上の入金口座と融資姿勢は密接な関係があります

良くあるご相談の中に、
「銀行さんから売上の入金口座を当行
 に移して欲しいと依頼されているが、
 応じないといけないのか?」
というものがあります。
新規融資を申し込んだタイミングで、このような依頼をしてくるケースが多いようです。

銀行から見ると、自行の口座で入金や支払をしてもらうことは、収益面、安全面において大きなメリットがあります。

例えば、今回2,000万円の融資を行ったとしても、預金残高が常に1,000万円あれば、実質は1,000万円の資金負担で済むため、大変効率的です。また、日々の入出金から状況を読み取ることができますので、悪い兆候もいち早く感じ取ることができます。

このようなメリットが銀行側にあるため、新規融資を検討する際に、基本的には売上の入金口座を移すよう依頼しています。確かに、売上の入金口座を移すことを確約すれば、融資の審査にはプラスに働きます。ただ、銀行の依頼に応じるかどうかは、戦略的に判断する必要があります。

中小企業の場合、売上金の入金や支払にメインで使っている口座はあまり多くありません。せいぜい1つか2つではないでしょうか。この貴重なメイン口座を、数ある銀行の中から一つか二つ選んでお預けする訳ですから、目先の融資で判断するのではなく、将来に渡って最も信頼できる銀行にメイン口座を置くのが良いと思います。

具体的には、最もプロパー融資で応援してくれる銀行です。保証協会の融資は銀行にとって殆どリスクがありませんが、リスクのない保証協会のお付き合いしか考えてくれない銀行にメリットを与えるよりも、リスクをとってプロパー融資をしてくれる銀行にメリットを与えた方が、安定した融資取引を期待できます。

融資取引が大きな銀行にメイン口座を置くと、いざという時に差し押さえをされたりするので、融資取引と預金取引は銀行を分けた方が良い、という意見をお聞きすることもあります。一理ありますが、業績が悪化することを前提とした考えのようです。これから業績が拡大に向かう、資金需要が旺盛な企業は、銀行を味方につけなくてはなりません。何のリスクも取っていない銀行にメリットを与えながら、何のメリットも享受していない銀行にリスクを取ってくれというのでは筋が通りません。

もちろん事業の特性によっては入金口座はメガバンクの方が良い場合もあります。その場合は、支払口座を移すだけでも大丈夫です。メイン口座として使う銀行を何となく決めるのではなく、融資取引を睨んで戦略的に決めることをおすすめします。