【実践コラム】財務の役割について


…財務機能の欠如が中小企業の課題です

私が銀行に勤めていた時の経験談です。
ある上場企業の子会社に商業ビルの建て替え資金を融資しました。数十億円の大型の案件でしたが、先方から完璧な事業計画書の提出があったため、あっという間に稟議書を書き終えた記憶があります。

もちろん、商業ビルの建て替え計画がスタートしたのは数年前であり、前任者も含めて何度も打ち合わせを重ねてきた結果ではありますが、計画書には、投資計画、数値計画、キャッシュフロー計画はもちろんのこと、市場調査や保全についても網羅されており、審査上ネックになりそうな全ての点について事前
回答がなされていました。

この融資案件の折衝相手は先方の財務課長で、これらの資料を作成したのも財務課長です。重要な打ち合わせの際に、財務部長が同席することはありましたが、社長は親会社の役員でもあるため、契約の時まで一度もお目にかかることはありませんでした。

ある程度成長した企業では、社長自らが銀行に提出する資料を作成したり、折衝をしたりすることは殆どありません。手間の問題もありますが、財務業務は専門性が高いため、専任の担当部署をおいて対応にあたらせることが多いようです。

一方で中小企業はどうでしょうか。「貴社の財務はどうされてますか?」というご質問を投げかけると、「経理の担当者がやっています。」「税理士さんに任せています。」という回答をよく頂戴します。しかし、経理や税理士さんが主に行っている業務は税務業務であり、財務業務は似て非なる業務です。

財務の最も重要な役割は資金調達です。金融機関の考え方を理解し、金融機関が評価する決算書や資料を作成し、会社の実力相応の資金調達を行うことがミッションです。おそらく、貴社の経理担当者や税理士さんにお聞きすると、そのようなミッションを与えられた覚えはないとお答えになるはずです。

経理や税理士さんに財務を任せているという思い込みは大変危険です。特に会計処理については、思わぬ形で資金調達に悪影響を与えることがあります。今一度、雇用契約書や顧問契約書を再確認してください。殆どの中小企業において、財務業務を誰もカバーしていないことが分かると思います。

財務機能が欠けていることで、本来受けられるべき融資を受けられていない企業様が多数あります。融資の審査資料として、税務目線で作成された決算書を提出するだけでは不十分です。
そもそも決算書は、税務署だけでなく金融機関の目も意識して作成する必要があり、また、融資申込時には必ず計画書を添える必要があります。