【経営コラム】事業性評価融資で変わること、変わらないこと(続)


…事業体として至極当然のことを突き詰めていくことこそが、
金融機関が行う事業性評価融資の基準に適合することになります。

前回のつづきです。

「事業の内容や成長可能性等を適正に評価(事業性評価)して…」、様々な人が行う様々な事業の、その事業内容や成長可能性を正しく評価できる方法は存在するのでしょうか?
答えは、NOではないがYESとも言い難い、と言ったところでしょうか。この前提で話を進めます。

前回とは少し違う視点で整理します。

1.過去から現在までがうまくいっておれば、さらに、そのうまくいくレベルが向上しておれば、概ね当面はうまく行きそうと推定できるため、事業性評価は○になるはずです。
具体的には、過去の決算書を数期並べて、右肩上がり(又は横ばい)の増収・増益(又は安定収益)、直近の資産状況(BS)に不備がなく、さらに、この成長曲線(横這い)の延長線上の事業計画を持っておれば事業性評価は○でしょう。

2.事業体としての過去が無い新設事業者の評価(創業融資)時には、経営者の経歴と自己資金を勘案します。これは、事業体の過去を経営者の経歴に、足元のBSを自己資金に置き換えた考え方です。さらに、創業事業計画の妥当性は、その計画の蓋然性が適用されます。これぐらいの売上は立ちそう、経費はこれぐらいあれば足りそう、このような一般常識をあてはめて判断します。経歴と自己資金、計画の蓋然性が整えば、創業者の事業性評価は○になるはずです。
※自己資金要件については、政策的に審査が緩くなる趨勢です。

3.事業の将来性を評価する時は、その事業の事業立地が勘案されます。これは1.を前提にした上での、加点又は減点の要素です。
例えば、インバウンド、IoTやシェアリングエコノミ-は、事業立地として加点要素でしょうが、どこにでもある○○屋さんでは加点されません。逆に、不況業種は減点でしょう。何屋さんをやるか、事業立地も事業性評価には重要な要素です。事業立地は、1.の条件が整った上での要素ですが、1.の悪さを覆せる事業立地の優位性があればこの限りではありません。ただし、この判断は極めて難解です。

4.知的所有権の有無も事業性評価のひとつになるはずですが、3.と同じく、1.の条件を補完する要素と考えた方が良さそうです。もちろん、1.の悪さを覆せるぐらいの知的所有権であれば別ですが。

事業性評価(融資)、この発想は決して目新しいものではありません。金融機関は従前より、金融庁の検査マニュアルの有無、内容に関わらず、事業性評価を行ってきました。金融機関が求める取引先は、あくまでも返済してくれる会社・安定した会社・伸びる会社であるため、事業性評価は必要でした。

◆金融検査マニュアルが整備される前は…
1.を軸に、3.や4.その他あらゆる要素を加点・減点要因に組み込んで、金融機関独自の融資判断基準を有していました。
結果、時に大胆な企業支援が実施され、後のBIGカンパニーを創出してきました。

◆金融検査マニュアルが整備された後は…
1.を判断基準にしなさいとする厳しいルールが課されたため、3.や4.の要素を融資判断に組み込むことが難しくなったために、画一的な融資審査が行われるようになりました。この背景には、バブルの崩壊で傷ついた金融機関自身のBSを是正する狙いがあったためです。また、この期間に金融機関は3.4.その他の判断力=目利き力を無くしてしまったようです。

◆今後は…
金融検査マニュアルが整備される前に戻るはずです。1.を軸に、3.や4.その他あらゆる要素を加点・減点要因に組み込んで、金融機関独自の融資判断基準が構築されることでしょう。
ただし、
◎あくまでも1.が判断基準の肝であることに変わりはありません。
◎3.や4.その他は、企業側が、積極的に情報発信していかないと、金融機関には気付いてもらえません。

事業性評価融資の導入で、金融機関の融資は変化するはずです。ただし、その変化は突拍子もないものではありません。事業体として至極当然のことを突き詰めていくことこそが、金融機関が行う事業性評価融資の基準に適合することになります。ただし、今まで以上に金融機関にわかってもらう努力、とりわけて情報提供を継続的に行うことが重要になってきます。このこと
は、肝に銘じてください。
※金融機関はモニタリング機能を充実させるはずです。

◎「税務」に「財務」を付加してクライアントの財務・金融機関対応を継続してサポートする我々『新・税理士』としても、金融機関の動きを注視しながら、クライアントのサポートに励みます。

※銀行融資プランナー協会の正会員である当事務所は、クライアントに『お金の心配をできるだけしない経営を行ってもらう』ための新しい機能(=金融機関対応を含む財務の機能)を持つことを宣言いたします。我々は、『税理士』ではなく、『新・税理士』です。遠慮なくご相談ください。