【経営コラム】中小企業の経営分析手法(その2)

…GEマッキンゼーマトリックス

…前回号のつづきです。

前回ご紹介したBCGマトリックスよりはその分析が複雑(分類が4つから9つに増えます)になりますが、その分GEマッキンゼーマトリックスは精度が向上するといわれています。
以下、解説いたします。

GEマッキンゼーマトリックスは、企業の事業ポートフォリオを評価し、経営資源を最適に配分するためのフレームワークです。中小企業でもこのマトリックスは有効であり、事業の現状や将来性を整理するための手助けとなります。以下は、このマトリックスを中心にした中小企業の経営診断のための指針を示します。

1. 事業ポートフォリオの確認

まずは、企業が保有するすべての事業や製品ラインを明確にリストアップします。各事業の競争力や所属する市場の魅力を正確に評価するための前準備となります。

2. 事業の競争力の評価

  • シェア…各事業が保有する市場シェアは、その競争力の指標として有効です。
  • ブランド認知…中小企業特有のブランドやサービスの特徴、顧客からの評価なども競争力の指標として取り入れます。
  • 収益性…各事業の収益率や利益率をもとに、競争力を数値化します。

3. 市場の魅力の評価

  • 市場成長率…事業が所属する市場の成長率は、その市場の魅力を示す基本的な指標となります。
  • 顧客のバーゲニングパワー…顧客が持つ交渉力や価格感受性は、市場の魅力を評価する要因となります。
  • 競合の激しさ…競争相手の数や競合企業の戦略によって、市場の魅力は変動します。

4. GEマッキンゼーマトリックス上へのマッピング

事業の競争力と市場の魅力を基に、各事業をマトリックス上に配置します。マトリックスは以下の3×3のグリッドから成り立っています。

  • 強い競争力×高い市場魅力…これらの事業は、成長の機会があり、積極的に投資を行うべきエリアです。
  • 中程度の競争力×中程度の市場魅力…これらの事業は、選択的な投資や事業の再構築を検討するエリアとなります。
  • 低い競争力×低い市場魅力…これらの事業は、撤退や資源の再配分を考えるべきエリアです。

5. 戦略の策定

マトリックスの位置に基づき、各事業に対する中長期的な戦略を策定します。これには、投資の増加・減少、新市場の開拓、新製品の開発など、具体的な行動プランを含むことが必要です。

6. 実行とモニタリング

策定した戦略を実行に移す際、具体的なKPIs(Key Performance Indicators)を設定し、その達成度を定期的にモニタリングします。このフィードバックループを通じて、戦略の効果を評価し、必要に応じて微調整を行います。

7. 定期的な見直し

市場環境や技術の進化、消費者のニーズなどは常に変化しています。そのため、定期的にGEマッキンゼーマトリックスを更新し、事業の位置付けや戦略を見直すことが必要です。

結論

中小企業においても、GEマッキンゼーマトリックスは戦略的な意思決定のための有効なフレームワークとして活用できます。市場の変化や競争の激化が進む中で、経営資源を最適に配分するための明確なガイダンスを提供してくれます。マトリックスを効果的に使用することで、中小企業も競争優位性の維持や成長機会の最大化を目指すことができます。

BCGマトリックスやGEマッキンゼーマトリックスの、詳細で正確な分析を行うためには相応の労力が必要になりますが、考え方は、決して難解なものではありません。この考え方は、起業や新規事業、事業再構築を行う時などには特に重要です。考え方だけでも理解いただくことをお勧めします。

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