【実践コラム】円安・金利上昇局面のヘッジ戦略について

…どちらに転んでも資金繰りを守る方法を整理します。

「為替と金利は予測不能」が大前提です。足元ではドル円が150 円前後、長期金利が1%台ですが、これがさらに進むのか、反転するのかは誰にも言い切れません。そこで、「もし円安・金利上昇が続いたら得をし、戻っても大きな損をしない」という保険的な視点で、為替予約と借換えの使い方を整理します。

1.為替予約は層でリスク分散
為替予約は未来の方向性を当てる手段ではなく、レート変動を平準化する道具と割り切りましょう。半年分を一括予約すると当たり外れが大きくなるため、月次・四半期・半期の三層に分け、必要量の 50~70%を上限にヘッジする方法が無難です。
将来円高に戻った場合でも、予約していない部分が恩恵を受けるため、全体の損益はならされます。

2.請求通貨を変えるヘッジしない選択肢
輸出企業でドル建て売上が多い場合、円安はプラスに映りますが、部材や物流が同じドル建てなら利益は相殺されがちです。ユーロや円建てへの請求変更は交渉コストがかかるものの、為替変動の影響自体を減らすという根本的な対策になります。交渉が難しければ、最低でも契約更新のタイミングで検討する価値はあります。

3.変動→固定へ借換える目安
金利上昇が続く可能性もあれば、早期に打ち止めになるシナリオもあります。判断に迷うときは、「残存期間3年以上・借入残高が大きい・今後金利が 0.5%以上上がると試算される」この3条件がそろったら固定化を検討するのが一つの目安です。借入全体の 50~70%程度を固定にする折衷策なら、上昇局面でも変動のメリットを一部残せます。

4.銀行交渉はシミュレーション表を作成
「円がさらに5円安く、金利が 0.3%上がったらどうなるか」というシミュレーション表を銀行に示すと、対策の必要性が客観的に伝わります。逆に円高・金利低下のケースも併記し、どちらに振れても資金繰りが耐えられる設計であることを示しましょう。リスクが数字で見える企業は、格付けの非財務評価でもプラスに働きやすくなります。

【まとめ】

  • 先行きを当てるのではなく、振れ幅を抑える保険を掛ける発想
  • 為替予約は層を重ねて平均化し、上限を需要の 50~70%に抑える
  • 借換えは「残高・期間・想定上昇幅」の3条件で固定比率を決定
  • どちらの策も、円高・金利低下時に致命的な損を出さない設計が鍵

どうなるか分からない局面だからこそ、当てるより守るアプローチで資金繰りの安定を図りましょう。

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